高校2年生現代文の授業です


by coco-sensei

公開授業で

もう、何年も前のことになりますが、同じ市立の高校で、国語の公開授業があったので見に行ったことがあります。
古典の授業でした。
教材は何だったか、もう忘れてしまいました。
40代半ばの男の先生の授業でした。

その高校の国語の先生達も、その授業を見に来ていました。
その中には、以前の職場で同僚だった先生方もいて、目配せをしたりしました。
アドバイザーということで、近所の女子大の先生が来ていました。
大人しい感じの若い女性の先生でした。

覚えているのは、その授業の内容が、あんまり良くなかったことです。
たぶん、授業の手順とか、主に取り上げる箇所とか、文法の説明とか、そういういろんなことが、良くなかったのでしょう。
ダメだーと思いました。
少し怒りも覚えました。

私は、質の良くない授業を見ると、いつも無償に腹が立ちます。
これは教員なら誰でも同じなのではないかとも思いますが、わかりません。

授業のあと、学校の時間帯に従って10分の休憩があり、そのあと質疑応答ということになっていました。
休憩になると、親しい兄貴分とも言える、元同僚がやってきて、
「おまえ、あんまり言うなよ。」と言いました。

私がこの授業に内心腹を立てていたのが分かったのでしょう。
私は何でもすぐに顔に出てしまうのです。
その上、しょっちゅうこの口が災いを招いています。

質疑応答はいくつかあって、私も何か言ったと思いますが、さっき釘を刺されたので、あんまり致命的なことは言わなかったと思います。
アドバイザーという女子大学の若い先生は、何か少し本質的な所にコメントされました。
小さな細い声で、少し首をかしげながら、口の先の方で話す人した。
私は、彼女の指摘はいい指摘だったと思ったけれど、ほかの人が、それをどう思ったかわかりませんでした。
結局、この授業の決定的なダメさについては、さほど印象に残らない感じで、公開授業研究は終わりました。

家に帰ってから同業者の夫に、授業が、腹の立つほどダメだったと話しました。

それでも、いいんだと夫が言いました。
あの、何でも詳しくてすごいプリントを作るM先生のクラスより、あいつのクラスの方が平均点はずっといい。
生徒の反応もいい。
先生を応援しよう、はげまそうと思って、生徒が頑張るんだ。
みんながそう思ってる。
誰も何にも言わんかったろ?

全体に薄い感じのする、あの女の先生の、重要で本質的な指摘は、あの場にいる誰にも届かなくて、
「そうか、読んでみてくれ。」
「そうだよな、できるな。」
「はい、ありがとう」っていう、
たえず生徒によびかける、授業者の先生の声の方が、みんなに届いていたということなのでしょうか。

授業の目的は、授業そのものの正しさとかうまさではなくて、子どもにあります。
それを忘れないでいられる学校は、いい学校なのだと思います。
学校が、教官室が、教室が機能するということは、こういう先生がこの先生として活かされているということだと思います。

そういう学校では、いろいろな生徒が、それぞれに活かされているのだろうと勝手な想像をしました。
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# by coco-sensei | 2009-12-02 10:55 | つぶやき
さて、休まず次は、鼠です。

鼠の描写は、ちょっと残酷です。
生徒たちも、その残酷さから、やっぱり真剣に読んでしまうところだと思います。

さて、次は鼠のところに行きましょう。
ここ、すごく残酷ですね。


先生、これってほんとのこと?

これは小説だからわかんないけど、きっと本当のことなんでしょうね。
この頃は、こんなことないよね。


最近ではこういったひどい光景も、そういうことを書いたものも見られません。
そういう意味で、「城の崎にて」は、古典になりつつあるんだなって思います。

では、鼠のところも同じように、事実の描写と心の中の描写の境目を探してみることにします。
始めて下さい。


生徒の取りかかりはとても早いです。
私と一緒に急いでくれていて、ちょっと感激します。

またここに、本文を持ってきてみますので、どうぞご一緒にお考え下さい。

家鴨は頓狂な顔をして首をのばしたまま、鳴きながら、せわしく足を動かして上流の方へ泳いでいった。自分は鼠の最期を見る気がしなかった。鼠が殺されまいと、死ぬにきまった運命を担いながら、全力を尽くして逃げ回っている様子が妙に頭についた。自分は淋しい嫌な気持ちになった。あれが本当なのだと思った。自分が希っている静かさの前に、ああいう苦しみのあることは恐ろしいことだ。死後の静寂に親しみを持つにしろ、死に到達するまでのああいう動騒は恐ろしいと思った。自殺を知らない動物はいよいよ死にきるまではあの努力を続けなければならない。今自分にあの鼠のようなことが起こったら自分はどうするだろう。自分はやはり鼠と同じような努力をしはしまいか。自分は自分のけがの場合、それに近い自分になったことを思わないではいられなかった。自分はできるだけのことをしようとした。自分は自身で病院をきめた。それへ行く方法を指定した。もし医者が留守で、行ってすぐに手術の用意ができないと困ると思って電話を先にかけてもらうことなどを頼んだ。半分意識を失った状態で、いちばん大切なことだけによく頭のはたらいたことは自分でも後から不思議に思ったくらいである。

机のまわりを歩いて、生徒が教科書に書き込んだ境目を見ていきます。
すぐに出来る生徒と、まだ教科書に向かっていない生徒がいます。

どこにした?
うん、そこだね。


先生、境目って一つ?こっちは?

はいはい。病院を決めたりするところのことでしょ。
それ、事実だよね。
だけどそれ、鼠を見たことで思い出した内容だと思ったんですよ、私。
それで、その部分全部、心の中の描写に入れました。
だったら境目一つでいいんですよ。
納得する?


みんな、他の生徒との会話に聞き耳を立てて、自分も考え進めてくれます。

鼠のところもやっぱり、だんだん心の中に話題を移していっていますよね。
玉虫色です。
境目はここって言いにくくなってるけど、敢えて言うねー。

「死に到達するまでのああいう動騒は恐ろしいと思った。」

「自殺を知らない動物はいよいよ死にきるまではあの努力を続けなければならない。」
の間かなって思ったよ。
他の考えの人いる?


その後もしばらく机のまわりを歩いたので、自分が線を引いたところを見せてくれます。
「自殺を知らない動物はいよいよ死にきるまではあの努力を続けなければならない。」
の後を境目にしている子も時々います。

そうとも言えるよね。
よく読めてますねえ。よく見つけたね。


この場合それでもいいし、そう答えられる子は、ちゃんと読めてると思うので、
それでいいよってこっそり言うのです。

      ☆

さて、ちょっと読みを確認するために、また簡単な練習問題一つだけやってみようね。

問題 「そしてそう言われてもなお」の「そう」、これは何を指しますか?

そうです。
「フェータルなものだ」が答え。

傷が致命的だって言われても、ですよね。
致命的だって言われても、助かろうと努力しただろうって言ってますねえ。
それが鼠と同じだって思ってるんですね。

みんなだったらどうかなあ。
ジタバタすると思う?

最後の方、「両方が本当で」ってあるのは、きっと、ジタバタするかもしれない自分も、そうでないかも知れない自分も、どっちも自分だし、どっちでもいいって思ってるんですね。

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# by coco-sensei | 2009-06-12 14:23 | 城の崎にて
毎回の授業は、漢字テストから始めています。
しかし、今や試験範囲に行くまでに、1分でも欲しいところです。
そこで今日は漢字テストをやらないことにしました。

準備をしてくれた皆さんには大変申し訳ないのですが、今日は漢字テストはやりません。
漢字の試験範囲は①から⑩までですから、残りの⑨と⑩は自分で勉強して下さい。


やったー。

と喜ぶ声があちこちに上がります。
全体に大喜びといった感じです。

朝三暮四。

あ~情けない。

でも、その一方で、毎時間の漢字テストでさえ、範囲まで行かないと、
「最後までやってくれなかった」と言って不満に思う生徒がいます。

高校生になって、それも情けないですよね。

では、早速前回の続きです。
教科書を開けて下さい。


板書:城の崎にて   志賀直哉
 
    自分
    蜂


さあ、蜂の描写のところです。
前回の授業の終わりに、事実の描写と心の中の描写の境目を見つけてください、という問題を出したけど、出来たかな?
どこにした?
聞いてみようね。


読んで下さる方の便宜のために、ここにも本文を抜き出してみました。

それは三日ほどそのままになっていた。それは見ていて、いかにも静かな感じを与えた。淋しかった。ほかの蜂がみんな巣へ入ってしまった日暮れ、冷たい瓦の上に一つ残った死骸を見ることは淋しかった。しかし、それはいかにも静かだった。
 ⑥夜の間にひどい雨が降った。朝は晴れ、木の葉も地面も屋根もきれいに洗われていた。蜂の死骸はもうそこになかった。今も巣の蜂どもは元気に働いているが、死んだ蜂は雨を伝って地面へ流し出されたことであろう。足は縮めたまま、触角は顔へこびりついたまま、たぶん泥にまみれてどこかでじっとしていることだろう。外界にそれを動かす次の変化が起こるまでは死骸はじっとそこにしているだろう。それとも蟻に曳かれてゆくか。それにしろ、それはいかにも静かであった。せわしくせわしく働いてばかりいた蜂が全く動くことがなくなったのだから静かである。自分はその静かさに親しみを感じた。


そうなんです。
文章の途中。
「今も巣の蜂どもは元気に働いているが」
と、
「死んだ蜂は雨を伝って地面へ流し出されたことであろう。」
の間です。

すごい、よく見つけましたね。
前の「自分」についての描写の時もそうでしたけど、だんだん心の中の記述に移っているんですよね。


蜂のところは思ったより早くクリアでした。
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# by coco-sensei | 2009-06-11 17:31 | 城の崎にて
残り時間10分!

じゃ、大急ぎ。
次の蜂のところを読んでみましょう。

さっきと同じように、事実の描写と心の中の描写の境目を探してください。
時間がないからもう朗読しません。
各自で読んで下さい。
さあ、始めて下さい。


私はまた、机のまわりを廻り始めました。

同じ問いが繰り返されると、要領が分かるので、すぐに取りかかってくれます。
あっという間に見つけてしまう生徒も何人かいます。

時計を見ました。

では、次の時間は、ここから始めましょう。
終わりまーす。



さて、この先どうなるのでしょうか。
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# by coco-sensei | 2009-06-11 16:20 | 城の崎にて
さて、あと2時間で全部読む大挑戦の続きです。

ではまず、自分について書いた部分、①~③を読んでみましょう。

リアリズムの作家といわれた志賀直哉。
この作品でも、‘ありのままに’描いています。

ところが!

よーく見ると、初めの方は、事実の描写で始まったはずなのに…
③の終わりのあたりは、事実をありのままに描くのではなくて、自分の心の中の描写になっているんですよ。


ところどころ取り出してみせました。

①の初めは「山手線の電車にはねとばされてケガをした。」
これは事実についての記述でしょう。

③の終わりは「自分の心には、何かしら死に対する親しみが起こっていた。」
これは心の中を書いてる。

ね、前半が事実描写、後半が心の中の描写という風に分かれているんです。
これ、大発見だと思いません?

というわけで、どこがその境目か、みんなで探してみようと思います。

読んで、ここが境目っていうところに、印してみてください。
さあどうぞ、①から③を読んでみて下さい。


またまた机の間を回ります。
生徒は案外この作業を喜んで始めてくれました。

しばらくすると、のぞき込んだ私に、「ここでしょ」って声をかけてきます。

ではここで、この辺りではないかなと思われるところを抜き出してみますね。
便宜上、一文ごとに行替えをして、境目に符号をつけてみました。

どこだと思われますか?

夕方の食事前にはよくこの路を歩いてきた。(ア)
冷え冷えとした夕方、淋しい秋の山峡を小さい清い流れについてゆく時考えることはやはり沈んだことが多かった。(イ)
淋しい考えだった。(ウ)
しかしそれには静かないい気持ちがある。(エ)
自分はよくけがのことを考えた。(オ)
ひとつ間違えば、今ごろは青山の土の下に仰向けになって寝ているところだったなど思う。(カ)
青い冷たい堅い顔をして、顔の傷も背中の傷もそのままで。祖父や母の死骸がわきにある。(キ)


(ア)の前の文は明らかに事実の描写です。
(イ)の前の文はどうでしょう。これも、沈んだことを考える自分を外側から描写していると言えると思います。
(ウ)の前の文はどうでしょう。考えた内容の描写ではないので、(イ)の前の文と同じと考えました。

では、(エ)の前の文はどうでしょう。「それ」の指しているのはその前の「淋しい考え」です。それを「静かないい気持ち」といっています。「沈んだ」「淋しい」考えの中に、意外にも「静かないい気持ち」があることを見出して、それを述べているのです。
(オ)の前の文は、事実の描写です。

(カ)の前の文は、明らかに心の中に想像したことの描写です。
「青山の土の下に仰向けになって寝ている」って、どういうこと?
そう、死んでお墓の中にいるんですよね。
(キ)の前の文ももちろん、想像したことの中味です。

私は、境目を(オ)と考えました。
こう言っておいて、上のような説明をいたしました。
ちょっと強引かな、とも思いましたけど、答えをハッキリさせないと生徒が迷ってしまいますから、
いつもできるだけ答えを一つに絞ります。

終わりの方の『ロード・クライブ』の話は事実じゃないか?という質問がありました。

これ私は、思い出している内容だって考えたんですよ。

こうしてみると、志賀の描写は、
だんだん心の中の描写へと寄って行って、いつのまにか心の中にすっかり入る、
という風になっているのがわかります。




ここでちょっとした休憩代わりに、簡単な問題練習をしてみましょう。

本文「クライブがそう思うことによって激励されることが書いてあった。」
の「そう」が指している内容は何でしょう。


この辺りの本文、また抜き出して置きますので、一緒にお考え下さい。

いつかはそうなる。それがいつか?──今まではそんなことを思って、その「いつか」を知らず知らず遠い先のことにしていた。しかし今は、それが本当にいつか知れないような気がしてきた。自分は死ぬはずだったのを助かった、何かが自分を殺さなかった、自分にはしなければならぬ仕事があるのだ、──中学で習った『ロード・クライブ』という本に、クライブがそう思うことによって激励されることが書いてあった。実は自分もそういうふうに危うかった出来事を感じたかった。そんな気もした。しかし妙に自分の心は静まってしまった。自分の心には、何かしら死に対する親しみが起こっていた。

答えは、
「(自分は死ぬはずだったのを助かった、何かが自分を殺さなかった、)自分にはしなければならぬ仕事があるのだ」
の部分。
この問いの場合( )部分は、在ってもなくても正解だと思います。


というわけで、①から③大体読めたことにして、ちょっとまとめをしました。


①から③、書いてあることは説明しなくても皆さんの目に浮かんだと思います。

こうしてみると、
志賀直哉が「ありのまま」に描写しようとしたのは、事実だけじゃなくて、心の中もだったんですね。

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# by coco-sensei | 2009-06-08 23:22 | 城の崎にて
漢字テストが終わったら、早速授業です。
もう、のんびりしてるヒマなんてありません。
「城の崎にて」を全部で4時間、そのうち2時間を、本文を読むのと、文学史のおしゃべりで使ってしまったからです。
あと2時間で、できるのかなあ。
出来ないなんて言っていられません。
とにかく始めました。

「城の崎にて」は、死がテーマだと言ったけど、志賀直哉は、いろいろな生きものの死を観察して描く形で、それを描いてます。

前の授業の終わりに、やったこと覚えている?
何を取り上げているか、5つあげてみようってことでした。

できたかな。
これはすぐに出来ると思いますよ。


あてて答えてもらったのを、順に黒板に書き込みました。

板書: ①~③ 自分
     ④~⑥ 蜂
     ⑦    鼠
     ⑧    桑の葉
     ⑨    イモリ


桑の葉っていうのが、わかりにくかったね。
死というのでもないのに、なんでこれが入ってるのかちょっと不明だしね。
まあ、書いてあるので、仲間に入れておきました。


初めにこういう作業を入れたのは、私なりに理由があります。

高校生にとっての「城の崎にて」って、全体的な印象で言えば、虫とかの死ぬ話。
劇的なストーリーも特に無いし、つまんないこと間違いなし、だと思ったのです。
そう思いませんか?

だから、こうして大まかな構成がつかめたら、ただだらだら書いてるじゃなくて、全体を眺めることになって、
自然に書き手の意図を考えたくなるかなと思ったわけです。

生徒自身が、そういう構成になってること自体を自分で見つけるのがいいのでしょうけど、
全部一人で、を授業で求める必要はないと思っています。

だったら、構成も私が示してもよかったか。
どうお考えでしょうか?

私が読む授業で、一番大切にしたいと思っていることは、
生徒が自分から、「よし、読んでみよう」と思って読めるようにすることです。
でも授業って、それぞれが自由に読みたい作品を読むわけではありませんから、それは考えただけでも難しそうでしょう。

今回は、いかにもつまらなそうな「城の崎にて」、「よし、読んでみよう」を起こすために、
面白いストーリーはないけど、全体の構成はあるんだな、思ってもらおうと考えたわけです。
ちょっとでも「ふうん、そうなんだ」って思ってくれたら、まあ成功です。

そういうわけで、
一番初めに、イヤにならないような分かりやすい問いにして、
構成の半分は自分で見つけるということを考えたわけなのでした。


いつものことですが、思ったほどうまくはいってないんですけどね。
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# by coco-sensei | 2009-05-27 21:13 | 城の崎にて
授業の初めは、いつも漢字テストです。

教室に行くと、生徒たちのほとんどは、漢字の練習をしています。
たぶん、直前になって慌てて覚えて何とかしている生徒がほとんどなのだと思います。
それでいいと思います。
それでこそ、漢字テストを毎時間やる意味があるような気がします。
そうでないと、知らない漢字なんて、なかなか覚えられませんから。

今日は3級の⑧です。
では、始めます。


1.チンツウ剤。


2.野生動物がガシする。


3.はみ出した文をサクジョする。


4.カンジョウを済ませて店を出た。


5.美術の授業でチョウコクを習う。


6.東京キンコウに住む。


7.犯人にカカンに立ち向かう。


8.異文化ハイセキ運動。


9.敵にアザムかれる。


10.思いがる。(下線部の読みの問題)



 
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# by coco-sensei | 2009-05-26 14:26 | 城の崎にて
それでも、残りの時間は10分ほどありそうでした。

そこで、大急ぎで授業に入ります。

それでは、さっそく志賀直哉が死のこと、どういう風に「ありのまま」に書いているのか。
『城の崎にて』の授業に入ります。

もうちょっとしか時間がないから、問題ね。

この作品、いろいろなものを順に観察してるんです。
何を観察してるか、というのが問題。

5つあります。


板書:  ・①~③ 自分
      ・④~  
      ・
      ・
      ・


本文に前と同じように①から番号をつけていきながら、5つを答えてね。
さあ始めて下さい。


生徒たちは、ノートを拡げたり、教科書に向かったり、静かに取り組み始めました。
私はいつものように、一人一人のノートをのぞき込んで歩きます。

ちょっと話をしたりして、実はこれが一番楽しい時間です。
話しかけないで通り過ぎるのを不満に思う生徒はあっても、話しかけるのを心から嫌がる生徒はいないようなのです。
不思議ですよね。

教師というのは幸せな仕事だとつくづく思うことが出来るひとときです。

あ、もう時間になりました。
問題の答えは、次の時間ですね。


本文に、番号をつけておきました。
よかったらおつきあい下さいませ。
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# by coco-sensei | 2009-05-24 21:05 | 城の崎にて
続きです。

その明治と大正の境目のすぐ下、に「自然主義」と「私小説」という枠があるでしょう。
これが入試でよく聞かれるところですから、お話しておきますね。


板書:自然主義 島崎藤村『破戒』
    私小説  田山花袋『蒲団』



田山花袋の『蒲団』なんてね、中年の男の人が、女の人のことを思って蒲団の中で悶々とするっていう小説なんですよ。
今読んだらつまんないかも知れないけど、当時の人は、こんなこと誰も口にしなかったんですね。
暴露小説という感じで、ビックリ大評判でした。

164ページに表がありますから見て下さい。
それぞれのグループの特徴が書いてあります。

『破戒』は、「人間社会の現実を云々」って書いてあります。
『破戒』も社会的な意味で隠された現実を暴露する小説だと言えます。
『破戒』の方は良かったら読んでみると今でも案外面白いです。

まあとにかく、「自然主義」っていうのは、今まで語られなかったことを隠さないで書こう!という小説なわけです。
田山花袋の『蒲団』も「自然主義」の中にいれられていることもあります。


ここで、ちょっとだけ間を入れまして、私がしゃべってばかりですから、声も少しかえて、できるだけ気分をかえます(のつもり)。

実は志賀直哉も、ありのままに書くことを目指した、リアリズムの作家と言われています。
表を見たら「白樺派」と「自然主義」は、大体同じ頃です。

でも、なぜか志賀直哉のリアリズムは、「自然主義」とは区別されています。
たぶん暴露的な内容ではなかったからでしょう。

じゃあ、志賀直哉のリアリズムってどんなのかな、と思いながら、今回『城の崎にて』読むわけです。

はい、文学史、おしまいです。


ここで大きくひと息つきました。
教室全体をぐるっと見渡します。
そうすると、不思議と生徒も顔を上げてあたりを見渡します。
小休止です。

だけど、またすぐ続けます。
なんたって、時間がないのです。

せっかく便覧があるので、ついでに、志賀直哉のページも見ましょうね。
大急ぎー。
194ページ開けて下さい。
教科書の志賀直哉って、おじいさんだけど、若いときの写真が出てますよ。
白樺派の人たちってね、みんなお金持ちのお坊ちゃまだったんですけど、どう?

城崎温泉の写真もありますから見てねー。


私の話を熱心に聞いてくれる生徒もいるし、他のページを見てる子もいれば、おしゃべりしてる子もいます。
何人かで一冊をのぞき込んだりしているせいもあって、解放感があるのです。

あとね、全然関係ないけど、最近の小説のことまでいろいろ出てるんだよ、この便覧。
このごろの小説、読んだことありますか?
昔よりうんと面白いと思うんですけど。


時間がないなんて言いながら、脱線です。
だめだって分かっているけど、小説の授業の時、今現在の小説にも触れたいと思います。

例えばねー、215ページの山田詠美の『ぼくは勉強が出来ない』とか、
216ページの川上弘美の『先生の鞄』も、映画より本の方がずっと面白いよ。
ここには出てないけど、えっとー、『夜のピクニック』読んだ?
あれも高校生たちが主人公ですよね。

ああ、もっとしゃべりたいけど、時間がないから、便覧の話はここまでね。

さ、便覧は閉じて元の席に戻って下さい。
見せて下さった人、ありがとう。

残った時間で、ちょっとだけ授業しましょう。


楽しい時間は終わったなっていう感じで、みな机や椅子をガタガタと言わせながら、元に戻っています。
またしばらく時間がかかりそうです。
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# by coco-sensei | 2009-05-23 21:02 | 城の崎にて
まもなく中間考査が始まります。
「城の崎にて」にかけられる授業時数はたった4時間。
もう、読むだけで1時間使ってしまいましたから、残りはあと3時間しかありません。

その貴重な時間のうちの一部を、私は文学史に割こうとしています。
それもたぶん、ごく簡単にしかできないでしょう。

さて、授業内容に入りましょう。

それでは、授業に入りまーす。
前回の授業の終わりに言っておいた「国語便覧」、持ってきてくれたかな。


あー忘れてたーって感じで、ゴソゴソ取り出したり、後ろのロッカーに取りに行く生徒が何人も。
うーん、見たところ、持ってるの、半分以下だなあ。

あたりを見渡して、持ってる人に見せてもらってー。
持ってる人は見せてあげて。
忘れた人は、自分からお願いして近寄っていってー。

あ、このあたりみんなちゃんと持ってきてくれてるね。
あそこらへん、一冊もないから、悪いけど貸してあげてくれない?


こういう時、生徒はみんな大概とても親切です。
隣同士の男の子と女の子が遠慮がちに一緒に見ていたり。
日頃はあんまりクラスになじめていない子も、仲良く見ています。

でも、中には近くの子を嫌って、遠くの席の仲良しのこのところまで、椅子を運んで勝手に移動しちゃう女の子もいます。
わがままで、自分勝手なタイプの子どもたちです。
困ったものです。

みんな見られるようになったかなー。
見てない人いない?


あーあ、これだけで10分は経過してしまいました。
でもね、授業ってこんなものなんです。
持ってこないとか、さっさと出来ないとかは織り込み済み。
イライラしても始まりません。

では、162ページ、開けてくださーい。
162ページは、見開きで「近現代文学の流れ」という図のページです。
f0206660_1362317.jpg

上の方の真ん中へんに、「白樺派」っていうのがありますから探してください。
ありました?
その中に志賀直哉ってあるでしょう。

表の一番上をちょっと見るとね、これがちょうど明治から大正にかわる頃なんだなというのがわかります。


なかなか開けない子もいるし、例の女の子たちはおしゃべりしています。
でもまあ、現代文の授業でそういう表を見たなあっていうかすかな記憶があるのと無いのでは大違い。
叱ったりしてつまらなくさせる必要なんて全然ありません。

授業はいつも、そういう世界があるということの、一つのお知らせでもあるのです。




前回の漢字の答えです。
結局間があいてしまいました。すみません。

1.緊迫  2.委託  3.要請  4.承諾  5.譲渡  6.軌跡
7.陶酔  8.錯誤  9.つくろ(う)  10.はか(る)
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# by coco-sensei | 2009-05-23 11:37 | 城の崎にて
漢字テストは、引き続き3級です。
今日はちょっと難しいような気がします。


1.中東情勢がキンパクしている。

2.運営をイタクする。

3.救助隊の出動をヨウセイする。

4.申し入れをショウダクする。

5.第三者へのジョウトを禁じる。

6.成功までのキセキ。

7.美しい音楽にトウスイする。

8.時代サクゴな考え方。

9.繕う(読みの問題)

10.諮る(読みの問題)


いかがでしたか?
答えは次回です。
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# by coco-sensei | 2009-05-18 22:06 | 漢字テスト
CDの朗読は、25分くらいでした。
終わってみると、残り時間はあと5分ほど。
5分では、本文に入ることは出来ません。

文学史をやろうと思っておりましたから、一つだけ言って終わることに決めました。

「城の崎にて」どうだったかな?
次の時間から読んでいきましょうね。

今日は、あと5分あるから、これ一つだけ。

志賀直哉が、始めた雑誌の名前です。


板書:雑誌『白樺』

しらかばって読みます。
文学史としては、一つの出来事でしたから、この名前を知ってて欲しいです。
そのお話は次の時間にね。

それから、この「便覧」、次の時間に見たいと思いますから、ちょっと重いですけど忘れないで持ってきて下さい。


用意していた便覧を上に挙げて見せました。

授業はこれでおしまいでした。


ところで、さっき申し上げましたが、次は、ちょっとだけ文学史をやろうと計画しています。
4月に渡されたシラバスにざっと目を通したら、この辺りの文学史をやる機会は、この「城の崎にて」のところしかありません。
それで、ここで簡単に触れようと思いました。

文学史、つまんないですか。
生徒にとってはつまらないようです。
私自身、高校生の時、読んでもいない作品のことをただ覚えたりして、文学史って意味あるの?と思っていました。

では、受験用?
そうでもありません。

センター入試では文学史はほとんど出題されません。
私大の入試などでは、今も自然主義・島崎藤村『破壊』・田山花袋『蒲団』といったあたりが定番かと思います。
だからそういうのを全然聞いたこともないというのは、少しかわいそうですから、受験用という意味でも、もちろん触れておくべきでしょう。

でも本当は、文学史、受験とは関係なく、やっぱり触れる意味があると思っているんです。

せっかく古い作品を読むのなら、
それまでの文学の流れの上にいた作家達が、
現代から見通すことが出来るその時代のありようの中で、どうもがいて、それがどう作品につながっていったかっていう風に見る方が、面白いと思うのです。
ただ、その作品だけを味わうだけでなくてね。

少なくとも、私にはそういう意味でも作品に興味があるのです。
文学史を授業でやろうとするのは、そういう私の興味をね、少しだけでも生徒に伝えたいと思ってるということだと思います。

ははは、受験用とかではなくて、結局私がやりたいんですね。

それでは、また。
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# by coco-sensei | 2009-05-18 17:28 | 城の崎にて
ご無沙汰いたしました。
ブログちょっと休憩してしまいました。

先生がお休みだと自習ですよね。
自習時間の思い出ってありますか?

私が高校生の頃のことを思い出すと、
降ってわいたような空白の時間。
やってなかった他の教科の宿題や予習をやったり、普段の仲良しとは違う、席の近い友達と話し込んだりしてました。

教員になりたての頃は、そんな自習もあったような気がしますが、
最近は、必ず監督の先生が出席をとりに行って、自習も課題プリントを配ったり、全部が自由時間ではありません。
それでも、生徒にとっては昔と同じかも知れないなあと思います。

このブログはお休みでしたが、実際の授業はもちろんそう簡単に休むことは出来ませんので、進んでおりました。
少し端折ることになりそうですけど、また授業の様子、お伝えしていこうと思います。

二つめの教材は、志賀直哉『城の崎にて』です。

では授業に入りますね。

いつもの漢字テストが終わりました。

次は、志賀直哉『城の崎にて』をやりまーす。
96ページです。
開いてください。


板書:城の崎にて    志賀直哉

志賀直哉っていう名前、聞いたことあるでしょう?
これから読むのは、小説です。

この小説の話題は、ちょっと暗いよ~。
死ぬことですから~。


生徒たちが机の上を片付けて、教科書を開くのを待ちながら、ちょっと話をいたします。

すごく仲のいい友達にも、正直に言えない話ってありますよね。
性のこととかさ。
死んだらどうなるんだろうって話も、なぜだかね。
どっちも話す時ちょっと茶化したりしちゃうでしょ。

自分が死んだらどうなるんだろうって、考えたことある?


生徒は、口々にいろんなことを答えてくれます。

親がすごく悲しむだろうなって思う。

そうだよね。
どんなことがあっても、自殺はだめだよ。
こーんな小さい赤ちゃんだったのが、みんなみたいに立派に大きくなるまでに、もうどんなに大変か。


私は、少し面白そうに、明るく楽しく話しています。

いいこと教えてあげようかあ。
もし、とっても苦しい時がこの先あったらね、とにかく寝て、時間が過ぎるのを待ったらいいんだよー。
これ、案外いい考えなんですよ。
そういうときが来たら、思い出してね。


生徒の方は、私がヘンなことを言うので、どうやらあっけにとられているという感じです。

これから読む『城の崎にて』、死のことをどういう風に書いてるか、読んでみましょうね。

実は今日は教室にCDデッキを持って行っています。
片手で軽く持てるくらいの大きさで、白くて、丸っこい形をしたデッキです。

『城の崎にて』などの、文学作品は、まずは作品として味わって欲しいという気持ちがありますので、
細切れにして朗読をあてていくより、通して朗読をした方がよいと思っています。
元気がいいときは、自分で読むこともあるのですが、今回はCDにお願いしようと思ったのです。
コンセントに届かないので、教卓の脇の机にCDを乗せて、ちょっと動かしました。
生徒の関心は、もうCDデッキに向かっています。

では始めます。

スイッチを入れました。

朗読は、少し低めの男性の声の朗読でした。



前々回の漢字の答えです。

1.畜産  2.強硬  3.幼稚  4.穏便  5.収穫  6.粗末
7.紛争  8.緩和  9.束縛  10.ぶすい

答え、遅くなってしまってすみませんでした。
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# by coco-sensei | 2009-05-17 22:06 | 城の崎にて
     城の崎にて                      志賀直哉

f0206660_16173326.jpg ①山の手線の電車に跳ね飛ばされてけがをした、その後養生に、一人で但馬の城の崎温泉へ出かけた。背中の傷が脊椎カリエスになれば致命傷になりかねないが、そんなことはあるまいと医者に言われた。二、三年で出なければ後は心配はいらない、とにかく要心は肝心だからと言われて、それで来た。三週間以上──我慢できたら五週間ぐらいいたいものだと考えて来た。
 ②頭はまだなんだかはっきりしない。物忘れが烈しくなった。しかし気分は近年になく静まって、落ちついたいい気持ちがしていた。稲の穫り入れの始まるころで、気候もよかったのだ。
 ③一人きりでだれも話し相手はない。読むか書くか、ぼんやりと部屋の前の椅子に腰かけて山だの往来だのを見ているか、それでなければ散歩で暮らしていた。散歩する所は町から小さい流れについて少しずつ上りになった路にいい所があった。山の裾を回っているあたりの小さな潭になった所に山女がたくさん集まっている。そしてなおよく見ると、足に毛の生えた大きな川蟹が石のようにじっとしているのを見つけることがある。夕方の食事前にはよくこの路を歩いてきた。冷え冷えとした夕方、淋しい秋の山峡を小さい清い流れについてゆく時考えることはやはり沈んだことが多かった。淋しい考えだった。しかしそれには静かないい気持ちがある。自分はよくけがのことを考えた。ひとつ間違えば、今ごろは青山の土の下に仰向けになって寝ているところだったなど思う。青い冷たい堅い顔をして、顔の傷も背中の傷もそのままで。祖父や母の死骸がわきにある。それももうお互いになんの交渉もなく、──こんなことが想い浮かぶ。それは淋しいが、それほどに自分を恐怖させない考えだった。いつかはそうなる。それがいつか?──今まではそんなことを思って、その「いつか」を知らず知らず遠い先のことにしていた。しかし今は、それが本当にいつか知れないような気がしてきた。自分は死ぬはずだったのを助かった、何かが自分を殺さなかった、自分にはしなければならぬ仕事があるのだ、──中学で習った『ロード・クライブ』という本に、クライブがそう思うことによって激励されることが書いてあった。実は自分もそういうふうに危うかった出来事を感じたかった。そんな気もした。しかし妙に自分の心は静まってしまった。自分の心には、何かしら死に対する親しみが起こっていた。
 ④自分の部屋は二階で、隣のない、わりに静かな座敷だった。読み書きに疲れるとよく縁の椅子に出た。わきが玄関の屋根で、それが家へ接続する所が羽目になっている。その羽目の中に蜂の巣があるらしい。虎斑の大きな肥った蜂が天気さえよければ、朝から暮れ近くまで毎日忙しそうに働いていた。蜂は羽目のあわいからすり抜けて出ると、ひとまず玄関の屋根に下りた。そこで羽や触角を前足や後ろ足で丁寧に調えると、少し歩き回るやつもあるが、すぐ細長い羽を両方へしっかりと張ってぶーんと飛び立つ。飛び立つと急に早くなって飛んでゆく。植え込みの八つ手の花がちょうど咲きかけで蜂はそれに群がっていた。自分は退屈すると、よく欄干から蜂の出入りを眺めていた。
 ⑤ある朝のこと、自分は一匹の蜂が玄関の屋根で死んでいるのを見つけた。足を腹の下にぴったりとつけ、触角はだらしなく顔へたれ下がっていた。ほかの蜂はいっこうに冷淡だった。巣の出入りに忙しくそのわきをい回るが全く拘泥する様子はなかった。忙しく立ち働いている蜂はいかにも生きているものという感じを与えた。そのわきに一匹、朝も昼も夕も、見るたびに一つ所に全く動かずに俯向きに転がっているのを見ると、それがまたいかにも死んだものという感じを与えるのだ。それは三日ほどそのままになっていた。それは見ていて、いかにも静かな感じを与えた。淋しかった。ほかの蜂がみんな巣へ入ってしまった日暮れ、冷たい瓦の上に一つ残った死骸を見ることは淋しかった。しかし、それはいかにも静かだった。
 ⑥夜の間にひどい雨が降った。朝は晴れ、木の葉も地面も屋根もきれいに洗われていた。蜂の死骸はもうそこになかった。今も巣の蜂どもは元気に働いているが、死んだ蜂は雨を伝って地面へ流し出されたことであろう。足は縮めたまま、触角は顔へこびりついたまま、たぶん泥にまみれてどこかでじっとしていることだろう。外界にそれを動かす次の変化が起こるまでは死骸はじっとそこにしているだろう。それとも蟻に曳かれてゆくか。それにしろ、それはいかにも静かであった。せわしくせわしく働いてばかりいた蜂が全く動くことがなくなったのだから静かである。自分はその静かさに親しみを感じた。
f0206660_1622697.jpg ⑦蜂の死骸が流され、自分の眼界から消えて間もない時だった。ある午前、自分は円山川、それからそれの流れ出る日本海などの見える東山公園へ行くつもりで宿を出た。「一の湯」の前から小川は往来の真ん中をゆるやかに流れ、円山川へ入る。ある所まで来ると橋だの岸だのに人が立って何か川の中の物を見ながら騒いでいた。それは大きな鼠を川へ投げ込んだのを見ているのだ。鼠は一生懸命に泳いで逃げようとする。鼠には首の所に七寸ばかりの魚串が刺しとおしてあった。頭の上に三寸ほど、咽喉の下に三寸ほどそれが出ている。鼠は石垣へい上がろうとする。子どもが二、三人、四十ぐらいの車夫が一人、それへ石を投げる。なかなか当たらない。カチッカチッと石垣に当たって跳ね返った。見物人は大声で笑った。鼠は石垣の間にようやく前足をかけた。しかし入ろうとすると魚串がすぐにつかえた。そしてまた水へ落ちる。鼠はどうかして助かろうとしている。顔の表情は人間にわからなかったが動作の表情に、それが一生懸命であることがよくわかった。鼠はどこかへ逃げ込むことができれば助かると思っているように、長い串を刺されたまま、また川の真ん中の方へ泳ぎ出た。子どもや車夫はますますおもしろがって石を投げた。わきの洗い場の前でを漁っていた二、三羽の家鴨が石が飛んでくるのでびっくりし、首をのばしてきょろきょろとした。スポッ、スポッと石が水へ投げ込まれた。家鴨は頓狂な顔をして首をのばしたまま、鳴きながら、せわしく足を動かして上流の方へ泳いでいった。自分は鼠の最期を見る気がしなかった。鼠が殺されまいと、死ぬにきまった運命を担いながら、全力を尽くして逃げ回っている様子が妙に頭についた。自分は淋しい嫌な気持ちになった。あれが本当なのだと思った。自分が希っている静かさの前に、ああいう苦しみのあることは恐ろしいことだ。死後の静寂に親しみを持つにしろ、死に到達するまでのああいう動騒は恐ろしいと思った。自殺を知らない動物はいよいよ死にきるまではあの努力を続けなければならない。今自分にあの鼠のようなことが起こったら自分はどうするだろう。自分はやはり鼠と同じような努力をしはしまいか。自分は自分のけがの場合、それに近い自分になったことを思わないではいられなかった。自分はできるだけのことをしようとした。自分は自身で病院をきめた。それへ行く方法を指定した。もし医者が留守で、行ってすぐに手術の用意ができないと困ると思って電話を先にかけてもらうことなどを頼んだ。半分意識を失った状態で、いちばん大切なことだけによく頭のはたらいたことは自分でも後から不思議に思ったくらいである。しかもこの傷が致命的なものかどうかは自分の問題だった。しかし、致命的のものかどうかを問題としながら、ほとんど死の恐怖に襲われなかったのも自分では不思議であった。「フェータルなものか、どうか? 医者はなんと言っていた?」こうそばにいた友に訊いた。「フェータルな傷じゃないそうだ。」こう言われた。こう言われると自分はしかし急に元気づいた。亢奮から自分は非常に快活になった。フェータルなものだともし聞いたら自分はどうだったろう。その自分はちょっと想像できない。自分は弱ったろう。しかしふだん考えているほど、死の恐怖に自分は襲われなかったろうという気がする。そしてそう言われてもなお、自分は助かろうと思い、何かしら努力をしたろうという気がする。それは鼠の場合と、そう変わらないものだったに相違ない。で、またそれが今来たらどうかと思ってみて、なおかつ、あまり変わらない自分であろうと思うと「あるがまま」で、気分で希うところが、そう実際にすぐは影響はしないものに相違ない、しかも両方が本当で、影響した場合は、それでよく、しない場合でも、それでいいのだと思った。それはしかたのないことだ。
 ⑧そんなことがあって、またしばらくして、ある夕方、町から小川に沿うて一人だんだん上へ歩いていった。山陰線のトンネルの前で線路を越すと道幅が狭くなって路も急になる、流れも同様に急になって、人家も全く見えなくなった。もう帰ろうと思いながら、あの見える所までというふうに角を一つ一つ先へ先へと歩いていった。物がすべて青白く、空気の肌ざわりも冷え冷えとして、物静かさがかえってなんとなく自分をそわそわとさせた。大きな桑の木が路傍にある。むこうの、路へ差し出した桑の枝で、ある一つの葉だけがヒラヒラヒラヒラ、同じリズムで動いている。風もなく流れのほかはすべて静寂の中にその葉だけがいつまでもヒラヒラヒラヒラとせわしく動くのが見えた。自分は不思議に思った。多少怖い気もした。しかし好奇心もあった。自分は下へ行ってそれをしばらく見上げていた。すると風が吹いてきた。そうしたらその動く葉は動かなくなった。原因は知れた。何かでこういう場合を自分はもっと知っていたと思った。
f0206660_16195795.jpg ⑨だんだんと薄暗くなってきた。いつまで往っても、先の角はあった。もうここらで引きかえそうと思った。自分は何気なくわきの流れを見た。向こう側の斜めに水から出ている半畳敷きほどの石に黒い小さいものがいた。いもりだ。まだ濡れていて、それはいい色をしていた。頭を下に傾斜から流れへ臨んで、じっとしていた。体から滴れた水が黒く乾いた石へ一寸ほど流れている。自分はそれを何気なく、しゃがんで見ていた。自分は先ほどいもりは嫌いでなくなった。とかげは多少好きだ。やもりは虫の中でも最も嫌いだ。いもりは好きでも嫌いでもない。十年ほど前によく蘆の湖でいもりが宿屋の流し水の出る所に集まっているのを見て、自分がいもりだったらたまらないという気をよく起こした。いもりにもし生まれ変わったら自分はどうするだろう、そんなことを考えた。そのころいもりを見るとそれが想い浮かぶので、いもりを見ることを嫌った。しかしもうそんなことを考えなくなっていた。自分はいもりを驚かして水へ入れようと思った。不器用に体を振りながら歩く形が想われた。自分はしゃがんだまま、わきの小鞠ほどの石を取り上げ、それを投げてやった。自分はべつにいもりを狙わなかった。狙ってもとても当たらないほど、狙って投げることの下手な自分はそれが当たることなどは全く考えなかった。石はコツといってから流れに落ちた。石の音と同時にいもりは四寸ほど横へ跳んだように見えた。いもりは尻尾を反らし、高く上げた。自分はどうしたのかしら、と思って見ていた。最初石が当たったとは思わなかった。いもりの反らした尾が自然に静かに下りてきた。すると肘を張ったようにして傾斜に堪えて、前へついていた両の前足の指が内へまくれ込むと、いもりは力なく前へのめってしまった。尾は全く石についた。もう動かない。いもりは死んでしまった。自分はとんだことをしたと思った。虫を殺すことをよくする自分であるが、その気が全くないのに殺してしまったのは自分に妙な嫌な気をさした。もとより自分のしたことではあったがいかにも偶然だった。いもりにとっては全く不意な死であった。自分はしばらくそこにしゃがんでいた。いもりと自分だけになったような心持ちがしていもりの身に自分がなってその心持ちを感じた。かわいそうに想うと同時に、生き物の淋しさをいっしょに感じた。自分は偶然に死ななかった。いもりは偶然に死んだ。自分は淋しい気持ちになって、ようやく足もとの見える路を温泉宿の方に帰ってきた。遠く町端れの灯が見えだした。死んだ蜂はどうなったか。その後の雨でもう土の下に入ってしまったろう。あの鼠はどうしたろう。海へ流されて、今ごろはその水ぶくれのした体をごみといっしょに海岸へでも打ちあげられていることだろう。そして死ななかった自分は今こうして歩いている。そうf0206660_162312100.jpg思った。自分はそれに対し、感謝しなければすまぬような気もした。しかし実際喜びの感じは湧き上がってはこなかった。生きていることと死んでしまっていることと、それは両極ではなかった。それほどに差はないような気がした。もうかなり暗かった。視覚は遠い灯を感ずるだけだった。足の踏む感覚も視覚を離れて、いかにも不確かだった。ただ頭だけが勝手にはたらく。それがいっそうそういう気分に自分を誘っていった。
 ⑩三週間いて、自分はここを去った。それから、もう三年以上になる。自分は脊椎カリエスになるだけは助かった。
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# by coco-sensei | 2009-05-09 16:25

第7時 漢字テスト 6

漢字テスト 3級⑥です。

生徒の皆さんは、連休明けで、どうやら準備不十分の様子です。
それでもいつもどおり、漢字テストをいたします。

1. チクサン業を営む。

2. キョウコウに意見を述べる。

3. ヨウチな議論が続く。

4. オンビンに事を運ぶ。

5. 今年のシュウカク。

6. ソマツな外観。

7. 国際フンソウを解決する。

8. 規制カンワ。

9. 親のソクバクから逃れる。

10.無粋な態度。(下線部の読み)


いかがでしたか?
10の読みを、「むさい」と答えている生徒が何人かいて、つい、くすっと笑ってしまいました。

解答は、早いほうがいいと思いましたので、次の回にいたしますね。
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# by coco-sensei | 2009-05-08 15:45 | 漢字テスト
いよいよ「最初のペンギン」の最終回です。

では、残しておいた、冒頭部①②を読んでみましょう。

冒頭は、「神ならぬ人間は」という出だしです。
神ではない人間という意味です。

神と人間、どう違うって言っているかな。
抜き出してみます。

板書:神   新しいものの創造ということはありえない。
        全てがあらかじめ見えている。
   
    人間 宇宙の中の全てを見通すことはできない。
        自らが住む環境についても、完全な知識を得ることは出来ない。
        =「有限の立場」
   

 ここで、知っておくと便利なのはね、
こういった評論文に出て来る「神」というのは、たいていキリスト教の「神」だということです。
 私たちが普通に言う「かみさま」って、八百万の神様のうちの一人のことが多いと思います。
性格もいろいろ。
いい神様も悪い神様もいらして、中にはいたずらものだったり、胡子さまみたいな商売の神様なんかも。

 キリスト教の神様は、それとは全く違う神様。
終末までの全てを見通している存在です。

このことをちょっと知っておくと、今後も評論を読むとき便利だと思います。

さて、本文に戻ります。

こうしてみると、筆者はまず初めに、人間が、神様とは違って、「有限の立場」にいることから話を始めていることがわかります。

何だか意味が分かりにくいと思っていた冒頭部分ですが、
この後の話の大前提を、初めの段落①~④で述べていたわけでした。

「有限の立場」にいることが、創造を生むんですものね。


はい、これで「最初のペンギン」はおしまいです。

授業では、ここでもういちど大まかに文章の構成を確認しました。


宿題:

小さな紙(7㎝×10㎝)を配りました。
書いてきて欲しいこと。

 ・自分の最初のペンギン体験
 ・その結果


注意点 ペンネームで書いてください。ペンネームは年間通じて使います。
     そのまま印刷するから、濃く書いてね。

ホント言うと、ここまでの授業は‘本文をきちんと読む’という基礎作業に過ぎません。
ここから先が楽しい現代文の授業なんですけど、
時間が無くて、いろいろ話したりできなくなっちゃったから、家で書いてきてもらうことにしました。
皆さんの今までの経験から「最初のペンギン」的体験を探してみて、教えてくださいね。
印刷して読んでもらいますから、そのつもりで書いて下さいね。
かっこいいことを書かなくていいですよ。


出してもらった原稿を集めて、現代文通信を作ろうと思っています。

では、これで終わります。


あなたの「最初のペンギン」体験は、どんなのですか?
もしよかったら、お聞かせ下さいね。

では、 

きをつけ、礼。
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# by coco-sensei | 2009-05-07 19:58 | 最初のペンギン
すっかりご無沙汰してしまいました。
「最初のペンギン」の、最後の授業のご報告の続きです。

実はこの日、録音機を忘れていったのと、少し時間がたってしまったので、細部の記憶がありません。
このあとは、内容のご報告だけになります。
すみません。

最後の段落⑯~⑲を読んでいました。
⑱が、具体例を述べた段落。
⑰はその前説明の段落です。

というわけで、残っているのは⑯と⑲です。
読んでみると、⑯と⑲には、同じことが書かれているのが分かります。
それは何か。
‘演繹からは、創造することは生じない’
ということです。

⑯の冒頭を読んでみます。

 「創造することが、もし、確実な前提条件から、既に確立したルールに従って論理的な演繹を積み重ねていくことでしかないとしたら、そこには何の新しいものも生み出されるはずはない。」

ね、そうでしょう。
では、⑲を見てみましょう。
ライト兄弟の飛行機の例によって、創造することは、
「それがなかった状態」から「それが出現した状態」であると述べられていました。

⑲では、「創造すること」を
「それがなかった状態」から「それが出現した状態」への‘ジャンプ’
と言っています。

「創造することは、どこに着地するかも分からずに、未知の世界にジャンプすることに似ているのだ。」

⑯~⑲で筆者が述べているのは、このことなのでした。

実は、さりげなく放って置いたのですが、このことは、これより前の部分にもちょっとだけ述べられています。
どこだかお分かりでしょうか。

そう、⑩です。
⑩をそのままここに抜き出してみましょう。

「未来が見渡せないままに不確実性の海に飛び込むというのは、創造性の発揮において、人間がまさに行っていることである。創造的な人間は、不確実な状況下で海に飛び込むという「決断」を下すペンギンと、生物の進化の歴史をとおしてつながっている。不確実性に直面し、それを乗り越えるための脳の感情のシステムのはたらきをとおしてつながっているのである。」

ここを読みなおしてみると、ようやく、最後の段落で述べられた「創造すること」と、初めの方で読んだ「最初のペンギン」がつながります。
もちろん、ここをちゃんと心に留めながら読めた人は、最後まできれいに「最初のペンギン」とのつながりで読めていたと思います。

初めに、筆者の茂木健一郎さんが脳科学者であることをちょっとだけ紹介しました。
でも、この文章は脳科学についての内容ではありません。
ただ、この部分にちょっとだけ、脳の話が出てきていますね。

科学は、演繹によって、どんどん進歩を続けてきました。
科学者である茂木さんは、科学の方法である演繹を極めた方なのだと思います。
そういう方が、演繹ではなく、‘未知の世界へのジャンプ’を
人間に創造をもたらしてきたものとして取り上げているところが、この文章の面白さだと思います。
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# by coco-sensei | 2009-05-07 17:01 | 最初のペンギン
さて、漢字テストが終わりました。
また同じように声をかけます。

だれか、ここでひと息、みんなのために今日の楽しいお話ししてくれるいない?
すると、なんとあの坊主頭の橋本さんが、突然、話し始めました。

あのお、昨日、試合だったんですけどお、

お、さすが橋本さん。あなたこそ、誉れ高い最初のペンギンですぞ。

で、話のつづき。
ヘアスタイルで分かってたけど、一応聞いてみます。

何部?
野球部。

7時半に現地集合だったんだけど、起きたら7時でえ、でも行くことにしたんでえ、電車乗ってえ、
それで途中バスに乗り換える前に見たら、もう7時23分でえ、でも仕方ないけえバス乗って、
どうしようって思いよったら、今日の試合中止って連絡来た。


何だか面白い話でしょう。
みんな、笑ってしまいました。

先週の金曜日は遠足でした。
2年生は、隣県の水族館までバスで行ったそうです。

先生ペンギン見たよー。
へえ~、やっぱり譲り合ってた?
もう泳いどった。
最後に残ったやつが迷っとったよ。
それ、なんか違う話じゃない。
そのペンギン、流れに乗り遅れたんだ。いるよね、クラスにそういう人。ははは。


今日はもう絶対最後まで終われそうなので、私も安心しています。
そういうの、伝わるのかな。
クラス全体がのんびりムードです。

さて、始めましょう。
題を板書をして、早速「演繹」の説明の続きからです。

ルールとか、原理を‘拡げてあてはめて考えていく’のが「演繹」。
黒板に絵を描いたり、例をちょっと話したり。余裕です。

「演繹」の反対語、何か知ってる?
「帰納」。
これはたくさんの事例から、だからこうだねっていう風に、‘集めてくる’。
考え方の方向が反対なんです。だから反対語ね。


考える問題の時は何もしないけど、こういう説明の時だけすかさず聴いて、メモをとったりする生徒は案外多いです。
自分で意味のあると考えたことには取り組むけど、意味無いと思ったことにはエネルギーを使わないのだと思います。
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# by coco-sensei | 2009-04-29 23:33 | 最初のペンギン
漢字テストです。

1.全国模試がジッシされた。


2.新しい時代のタイドウを感じる。


3.ボウダイな資料。


4.タイガイの人なら腹を立てる。


5.カクウの人物。


6.都内ボウショで撮影した。


7.会長選挙をキケンした。


8.ハイエンをわずらい入院する。


9.災害で多くのギセイ者が出た。


10.暫時休業する。(下線部の読みの問題です。)



窓際の、一番後ろの男の子が下ばかり見ています。
怪しいなあ。
近くまで歩いて行ってみましたが、何をしていたのか分かりませんでした。



前回の答え

  搾る   動揺   没頭   湾曲   円滑   滞在   漂流   潜在   
  濫用(乱用)   たずさ(える)。
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# by coco-sensei | 2009-04-27 15:51 | 漢字テスト
⑯~⑲までの段落についての続きです。

具体例の段落は、⑱です。
これは、ノートを見て回ると、ほとんどの生徒が出来ていました。

では、この⑱の、ライト兄弟の飛行機の具体例は、何を言うための例でしょうか。
少し難しいと思います。


あてて、答えてもらいます。
日にちの番号であたってしまったのは、前回、授業中に漢字のやり直しプリントをやっていて私に注意されてしまった女の子です。
名誉挽回しようと思っている様子で、一生懸命答えてくれました。
「創造的な人は、未知のものへの好奇心に満ちている。」

う~ん、ちょっとちがう。
もちろんライト兄弟は未知のものへの好奇心に満ちていたと思うから、全部違ってるわけじゃないけど、そういう風に答えちゃうと、問いの答えにはならないなあ。


生徒が一生懸命考えて、答えてくれると、それがたとえ違っていても、
「そうですね、よくできましたね。」って言いたくなります。
「違うよ」って言うのは、とても勇気が要ります。
でも、がんばって「違う」って言います。

この具体例のポイントは、「当時の人たちは、飛行を目の当たりにしながら、自分たちの見たものを信じなかった」というところです。

時間を気にしているので、続けて説明してしまいます。

当時の人々は、どうして信じなかったのでしょう。
ライト兄弟がやったことが、「今までだれも見たことがないようなもの、地上に今まで姿を現したことことがないようなもの」だったからです。

創造するということは、何かちょっと新しい感じのものを作るというのではなくて、
ライト兄弟の飛行機のように、「今までだれも見たことがないようなもの、地上に今まで姿を現したことことがないようなもの」を生み出すということだということ、
それがこの具体例が用いられた理由です。


板書:具体例の段落 ⑱
    何を言うための例か。
    (創造とは、未知のものを作り出すということ)

さっき答えてくれた女の子の答えた部分を少し使って黒板に答えを書きました。
他の答え方の例も、いくつか口頭で述べました。

では、急ぎますけど次の問題。
⑯~⑲全体で言いたかったことは何でしょうか。

筆者の茂木さんは、今確認したような、‘創造すること’について、どう言ってているのでしょう。
ヒントはね、さっき、⑰⑱を中心に読んだことになっていますから、今度は⑯と⑲に注目するといいです。


などとヒントを出しながら、ちょっとしか待たないで、すぐに説明を始めてしまいます。

まず、⑯の初めの文を読みますね。

「創造することが、もし、確実な前提条件から、既に確立したルールに従って論理的な演繹を積み重ねていくことでしかないとしたら、そこにはなんの新しいものも生み出されるはずはない。」

あ、「演繹」という言葉が出てきました。
これ、評論でよく出て来る大事な言葉なんです。
説明しときますね。


って、私は、ここで突然やらなきゃと思って「演繹」の説明を始めてしまいました。
と、始めてまもなく修了のチャイム。

え~!!!

そうだ、短縮授業だったんだー。
私がビックリしているのを見て、生徒はちょっと笑っています。

今日中に「最初のペンギン」を終えることを目指してがんばっていたけど、あえなく終了。
残念。

続きは次回。
おわりま~す。


トホホ。
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# by coco-sensei | 2009-04-25 22:10 | 最初のペンギン
新学期から数えてもう5時間目。
「最初のペンギン」に入ってから4時間目。
よーし、今日で「ペンギン」終わってしまうぞーと意気込んで、授業に臨みました。

ところが、どうやら前の時間の体育が、長かったらしく、生徒がまだ揃ってもいなくて、三々五々帰ってくるところでした。
スポーツテストで走ったのだそうです。
みんな上気しています。

先生待ってー。
口々に言いながら、あわてて漢字のテキストを見ているのでした。

そういうわけなので、漢字テストが終わっても、すぐに授業という落ち着いた雰囲気にはなりません。
今日のお話、してくれる人誰かいる?
って水を向けると、あちらこちらから、
先生の子ども何歳?
先生、どこに住んどるん?


いちいち、中2。この近く
などと返事をいたします。
え、そしたら、娘ウチと同じ中学じゃん。
さて、誰もいないみたいだから、授業に入ろうねー。
うへ~。
騒ぎに知らん顔して、板書を始めました。

板書:「最初のペンギン」  茂木健一郎
  ①~④ 具体例の段落 1つ ( ) 


今日は、初めの①から④を、同じように具体例中心に読んでから、終わりの⑯から⑲の部分を、力試しでそれぞれ読んでもらおうという計画です。

じゃ、ウォーミングアップの問題ね。
①~④の中で、具体例のある段落はどこでしょう。
朗読の間に探してね。


これは③。みんなすぐにできました。
では、③は、何を言うための例でしょうか。

板書:「コンビニに行くと食べ物がある」
     =文明に飼い慣らされた人間

    コンビニに行っても食べ物がないという事態
     =何の保証もない自然 多くの不確実性
 


急いでいるので、こちらで説明をいたします。
そうですね、今までで読んできた、私たちが不確実性の中にいるということは、実はこの初めの部分に、すでに述べられていたわけです。
 不確実性って何か、私たちがその中にいるってことは、もう分かりますよね。
③④は、このあとの⑤~⑩と、⑪~⑯で説明されているという構成になっているんですね。


計画では、これに続けて①②を読むつもりでしたが、ふと、そうしない方がいいという気がして、急遽変更!
やっぱり今までと同じように、内容部分である⑯~⑲から先に読んでいくことにしました。

では、①②を読む前に、⑯~⑲を先に読んでみましょう。

今度は、今までのやり方で、皆さんで読んでみて下さい。
もう朗読もしません。
(時間の節約です)
さあ始めて下さい。

こう言っておいて、手順を板書いたします。

板書:⑯~⑲
    具体例の段落 (  )
    何を言うための例か。
        (                                  )
    ⑯~⑲全体で言いたいこと
        (                                  )


生徒は、ちょっと驚くほど、すぐに作業に取りかかって、真剣に考えている様子です。
教室がしんとなりました。

やっぱり、自分で考える方が面白いですものね。
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# by coco-sensei | 2009-04-24 23:47 | 最初のペンギン
漢字テストも4回目になりました。


1.油をシボる。


2.ドウヨウを隠しきれない。


3.研究にボットウする。


4.海岸線がワンキョクしている。


5.会の運営がエンカツにいく。


6.二日間タイザイする。


7.太平洋をヒョウリュウしている。


8.センザイ意識。


9.職権ランヨウ。


10.える。(下線部の読みを答える問題です。)



簡単な問題は、みなさんへの私のプレゼントだよーなどと言いながらの出題でした。
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# by coco-sensei | 2009-04-23 16:49 | 漢字テスト
さて、授業の続きです。

さあ次は、今日の大事な質問です。いきますよー。

⑫番みたいに、「不確実な状況の中で判断を下さないといけない」時l、
筆者の茂木さんは、どうすればいいと言ってますか?
自分の考えじゃなくて、茂木さんがどう言ってるかを、教科書を読んで答えてね。

答え方は、本文の抜き出しでも、自分の言葉でまとめてもどちらでもいいです。
ノートに書いて下さい。


「大事な質問」と言ったせいでしょう。
みんな真面目に取り組み始めました。本当にいいこ達です。

見て回ると、大体の子が抜き出して答えられていました。

あてて答えてもらいます。
見て回りながら、よくできましたねって声をかけているので、自信を持って大きな声で答えてくれます。

板書:自分の直観を信じて行動する
    乗り越えるための感情の技術を磨く


そうです。
‘データに基づいて確実な判断をする’というのではなくて、「直観」とか、「感情」って言っているんです。
科学者なのに、面白いよね。

これで今日の大事なところは出来ました。


キリのいいいところに来ました。
ここで、全体を見渡して、ちょっとだけ間を入れます。

あと、ついでにだけど、
本当についでという感じで、急いで付け加えます。

この「直観」と「感情」の関係が⑪段落に書いてあるんだよ。
読んでみるよ。
ほら、「不確実な状況下における私たちの直観を支えているのは、私たちの感じるさまざまな感情のニュアンスである。」って書いてある。
「感情」が「直観」を支えてるって言ってます。

同じこと、その後にももう一回。
「どんな方程式でも、どんなルールでも書くことのできないように思える感情こそが、不確実な状況の下での私たちの直観を支えているのである。」
全く同じ繰り返し。

⑪から⑯、もう読めちゃいました!


大きく深呼吸です。
ちょっと大げさに時計を見ます。

あ、まだ10分ありますね。
では、次に①から④を読みましょう。
でも、ちょっとコマーシャルみたいな休憩いれたいよね。

誰か、みんなの心の憩いのために、お話ししてくれる人いませんか?
歌や躍り出もいいですよ。


生徒たち、またお互いにキョロキョロ。

そうだ、あの、ガムの宣伝の踊りがあるじゃない、あれ、踊れる人いるでしょ。
踊ってー


中学生の娘が覚えて家で踊っている、速い動きの踊りを思い出しながら言いました。
みんな、すぐにあのCMのことだって分かったみたいです。

笑い声。
後ろの席の女の子たちがおしゃべりを始めて、そのうち一人は小さく踊り始めました。
目があうと、よけい楽しそうに踊っています。
ほんとにおもしろいです。

さて、誰もいないようですから、授業にしましょうね。
あと5分。

①から④、読んでくれる人いませんか~。
じゃ、私が読みますね。

また、具体例の段落が一つあります。
聞きながら探して下さいね。


読み終わってから、急いであてました。
答えは③番。
ちょうど時間になりました。

はい、よくできました。
今日はここまでにしまーす。
号令お願いします。



きをつけ、礼。
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# by coco-sensei | 2009-04-23 00:12 | 最初のペンギン
そういうわけで、ちょっと急がなきゃと思いながら、授業に臨みました。

漢字テストが終わって、さあ、授業です。
でも、ちょっとひと息ついた方がいいかな。

ちょっと休憩しようかあ。
みんなのために、小さな今日の小話、してくれる人、いませんかー?

なかったら、すぐに始めますよ。


いつでも、できれば少しでも授業部分を減らしたい生徒達、
仲間同士で、「おまえやれ」という合図を送り合っています。

はい、締め切りまーす。
誰れもいないみたいですね。
では早速授業を始めましょう。


板書:「最初のペンギン」   茂木健一郎

前回は、ペンギンの具体例を中心に、⑤から⑩までを読みました。
最初のペンギンっていうのは、不確実な状況の中に、飛び込んでいく人の喩えでした。

では、今日はその続き、⑪から⑮までを読みます。
今から読みますから、皆さんは聞きながら、また具体例を述べた段落を探してください。
今度は、具体例の段落は一つです。

誰か読んでくれる人、いませんか?。


坊主頭の橋本さんがすっと手を上げました。
クラス中に、おおっというどよめき。

橋本さんは、少しもごもごしながらも、上手に読んでくれました。

板書:◇3 ⑪~⑯
       具体例の段落(一つ) 
 

具体例の段落はどこでしたか?
20日なので、20番の方…橋本さんですね。
橋本さんにはもう読んでもらったので、30番の方にいきましょう。


橋本さんの作戦勝ちです。
30番の女の子は、さっと答えてくれました。

そう、具体例の段落は、⑫番。
そうですね、「不確実な状況の中、判断を下さないといけない場合」の具体例でした。


板書:具体例⑫
    不確実な状況の中、判断を下さないといけない場合の例


ここで、ちょっと余分なお話です。

う~ん、この中で今のみんなに関係があるのって…
「どの学校に進学するか」のところだね。
この高校に決めた時のこと、覚えてる?どうしてここに決めたのかな。
あと、「この人と付き合って大丈夫か」も関係あるねー。
今、付き合ってる人がいる人、どうやって決めたのかな~。


今まであんまり授業に参加してなかった後ろの席の女の子達が、急にごそごそ。
とっても楽しそうな顔になりました。
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# by coco-sensei | 2009-04-22 23:29 | 最初のペンギン
今日はもう4回目の授業です。

ゴールデン・ウィークが明けるとまもなく、中間テスト。
週2時間(2単位)の授業ですから、新学期から中間テストまで、
授業は全部で10回か11回。

次の教材までが試験範囲の予定ですから、教材「最初のペンギン」は5時間で終えるつもりでした
予定よりちょっと時間がかかっています。

ちょっと、丁寧にやりすぎているかなあ。
でも、そんなにさっさと進めるわけにもいかないし。
だって、初めての教材は、その学習を通じて、私の授業の進め方や、要求内容やレベルを生徒に分かってもらうという意味合いもあるのです。

教材によっては、端折ってさっさとやることもありますが、今回は、できればそうしたくないなと思います。

だったら試験範囲を短くすればいい?
なかなかそうはいかないんですよねー。

今回同じ学年で、一緒に授業を進めている先生方は、
予定通りにやることに意味を見いだしておられるようです。
それもまた、納得できる考え方でもあります。
ある程度の学習の量を確保するということも重要だからです。

だからその場合、例えば「進んだところまでを試験範囲」
という範囲の決め方にはならないはずです。

というわけで、有り体に言えば、何が何でも、予定のところまで進まなければならないわけです。

これが案外と重圧になるんですよね。
私の隣の席の先生も、毎日頭を抱えてため息をついておられます。
彼の授業は、新学期の検診などの行事で、たくさん抜けるのだそう。

私ものんびりしてはいられません。
さあ、大変、大急ぎです。
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# by coco-sensei | 2009-04-20 20:52 | つぶやき
もう、慣れてきましたか。
また漢字テストです。
いつものように、最後10番は下線部の読みを答えてください。


1.コウカイ先に立たず。

2.成長をソガイする物質。

3.チンプな表現。

4.退職後はトウゲイに専念する。

5.ズイジ受付ける。

6.輸出拡大をヨクセイする。

7.時間にコウソクされる。

8.色素をチュウシュツする。

9.記事をケイサイする。

10.半世紀の時をてる。




第2回3級②の答え
 
塗装  開墾  欠如  妨害  令嬢  孤独  岐路  帆船  徐行  

とつ(ぎ)

どのくらいできたかな?
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# by coco-sensei | 2009-04-20 20:05 | 漢字テスト
授業の続きです。

じゃあ、次は、今日の大事な問いです。
最初のペンギンって、どういう人の喩えだろう。
これは、教科書から探して、抜き出して答えてください。さあどうぞ。


板書:◇2 最初のペンギンは、どういう人の喩えか。
      抜き出し(                         )


これは、すぐに抜き出した部分をノートに書く生徒がほとんどでした。

すぐ見つかるのは、「勇気を持って新しいことにチャレンジする人」の部分です。
分からない生徒には、口に出さないで、その子の鉛筆を取って、教科書に薄く線を引いて、
内緒みたいに、「ここよ」と言って歩きます。
それから、全体に聞こえるように声をかけます。

見つかった人は、他にもあるから探してみて。

教室を一回りして、教卓に戻ってから、当てます。

そうですね、「勇気を持って」のところですね。
ほかにもありますか。


これも、すでに探し出している生徒がほとんどでした。
抜き出しの時は、当たっても、わりと大きい声で答えてくれます。
生徒の答えた順に、黒板に書いていきます。

板書:最初のペンギンは、どういう人の喩えか。
    抜き出し「勇気を持って、新しいことにチャレンジする人」
         「不確実な状況下で勇気を持って決断する人」


とってもよくできました。
これらは、具体例の後の⑨の部分に、その説明として書かれています。
さあ、これで⑤から⑨まで、読めました。
難しいと思ってたけど、そうでもないでしょう。

はい、今日はここまでです。


終わりの言葉を口にすると、みんなパッと教科書もノートも閉じます。
すごい早さ。
ちょっとさびしいけど、仕方ないですね。
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# by coco-sensei | 2009-04-18 23:02 | 最初のペンギン
漢字テストが終わると、さあ、授業です。
実は、教室に入ったときから感じていたのですが、今日はちょっとクラスの雰囲気がヘンです。
前の時間に何かあったのでしょうか。
何となく荒んだ感じがします。

それでは、最初のペンギン、続きを始めましょう。
私の声が、空しく響く気がします。
とにかく、まずは黒板に、題と筆者名を書きます。

 板書:「最初のペンギン」    茂木健一郎
       具体例を中心に読む


ここで生徒は、教科書やノートを開いたり、机の上の余分なものを片付けたり。

おや、
窓側の席の前から二番目の男子生徒が、うつぶせています。
一瞬迷いましたが、無視しないことにしました。

あなた、どうしてうつぶせてるの?
授業がつまんなくて寝るんなら、私の責任も少しはあるけど、始めっから寝るって、どういうこと?

ちょっと強い口調で言いました。

痩せて背の高い男の子が、頭を上げました。
そして、驚いたことに、小さい声で、
ごめんなさい。

ちょっとビックリしました。
今時、叱られてすぐにあやまることの出来る生徒なんて、めったにいないのです。
教卓の座席表で、名前を確認しました。

おお、すぐにあやまりましたね、アベさん。
立派ですねえ。
叱られて、すぐにあやまれる人、そんなにいないんですよ。
アベさんが、なかなかの人だってことが、わかりました。


私はにっこりしました。
アベさんは、ちょこっと頭を下げました。
本当に、なかなかの生徒です。

さて、授業再開です。
前回、ペンギンの具体例を探しました。
小段落の⑤から⑧でしたよね。
今日はまず、その具体例が、何を言うための例なのか、考えます。

では、思い出すために、⑤から⑧をもう一度読みます。
誰か読んでくれる人~?
いませんか?じゃあ、私が読みます。
あ~あ、ここで読んどけば、あとで当たらないのに。チャンス逃しましたよー。


私が⑤から⑧を朗読しました。

さて、まず、ウォーミングアップの問題です。
表面的には、譲り合っているように見えるペンギン達、心の中ではどんなことを考えてますか?
抜き出しじゃなくて、自分の言葉でいいので、説明してください。
ノートに書いてね。


板書:◇1 ペンギンの具体例とは何か。
         表面的  譲り合っている
         心の中  


ゆっくりノートを見て回ります。
答えやすい問いですから、いろいろ自由に書いてくれていました。
中には、ペンギンのセリフにして書いてくれている生徒も。
2,3人にあてて、ノートを読んでもらいました。
セリフの子も、読んでもらいました。臨場感たっぷりのセリフに大笑い。

こうして、ペンギンのおかれた状況を確認。
生徒のノートの言葉を活かしながら、板書します。

板書: 心の中 飛び込まないと餌が得られない。
          でも、飛び込むことには、危険がある。


この頃には、初めの妙な雰囲気はすっかりなくなっていました。
次は、‘最初の’ペンギンについてです。





    
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# by coco-sensei | 2009-04-17 22:51 | 最初のペンギン
こんにちは。
授業の初めは、漢字テストです。
今日は第2回目、3級②です。
生徒はもちろん、出題範囲を勉強してきてからのテストです。



1.壁のトソウ工事。

2.荒れ地をカイコンする。

3.責任感のケツジョ。

4.仕事をボウガイされた。

5.友人は社長レイジョウだ。

6.コドクな少年時代。

7.キロに立つ日本経済。

8.ハンセンで海に出る。

9.ジョコウ運転区間。

10.娘のぎ先。


いかがでしたか?


第一回3級①の答え 

起伏 佳境 促進 模倣 偶然 喚起 満喫 委嘱 悲哀 くわだ(てる)
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# by coco-sensei | 2009-04-17 10:22 | 漢字テスト
生徒は、「ペンギンの具体例を述べた段落を探し出す」という作業をしています。
すぐに済ませて、他のことをしている生徒もいます。

ノートに何も書いてない生徒には、
「問いの意味わかる?」「今やること、わかる?」
と聞きます。
わからない、という生徒も何人もいます。

「具体」の意味が分からない、という生徒が、数人いました。
様子が目に見えるように書いてあるところを探してね。
ほら、ここから実際のペンギンの話しになってるでしょう。


さて、答え。
具体例を述べた段落は、⑤~⑧です。

始まりの⑤はほとんどの生徒がすぐに見つけました。
終わりの⑧も出来ましたが、⑨や⑩にした生徒もたくさんいました。

⑨と⑩は、もう実際のペンギンの話ではなくなっています。
⑨⑩は、ペンギンの話を受けて次につながる「論」の部分だと考えて、「具体例」の部分に入れないことにしました。

時間が来てしまったので、今日はここまでです。
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# by coco-sensei | 2009-04-17 09:23 | 最初のペンギン